
火の使用から始まり、機械の発明、そして現代のナノテクノロジーまで、人類はその革新性を持って技術を進化させ、生活を豊かにしてきました。
衣料品においても、忙しい現代人が求める時短的な機能や、いつでも清潔な見た目を保ちたいという願いに応え、日常を一層便利なものにする発明が生まれています。
戦後間もない頃、世界中の生活様式を変えた技術革新が「形態安定加工」でした。シワになりにくく、型崩れがしにくいという特徴により、人々は洗って干すだけで清潔感のあるシャツを着ることができるようになりました。
今回は、この「形態安定加工」について、仕組みや歴史、取り扱い方法まで詳しく解説していきます。このガイドがより快適な衣生活を送りたい方にとって、有用な記事となることを心から願っています。
1. そもそも「形態安定加工」とは?
日常の手間から人々を解放した「形態安定加工」とはどのようなものなのでしょうか?
先日のオックスフォード生地の解説に引き続き、今回も繊維製品品質管理士(TES)の資格を持つ古牧さんにお話を伺いました。
関連記事:オックスフォードシャツとは?人気の理由や生地の魅力、シーン別の選び方など徹底解説

「形態安定加工」は日本産業規格(JIS)の定義では、以下のような加工のことを言います。
「綿及び綿・ポリエステル混紡衣服に着用と洗濯とを繰り返しても形態安定性を長期にわたり保持できるような性能を付与する加工。」 (引用元:JISL0207:2005 繊維用語(染色加工部門) | 日本産業規格の簡易閲覧)
似たような加工にウォッシュ・アンド・ウェア(Wash and Wear)加工というものがあります。
「綿及びその混紡製品を洗濯・乾燥後、アイロンを掛けずに着用できることを目的とした加工。」 (引用元:同上)
アイロンを掛けずに着用できるということは、シワが無い、もしくは、それに相当する見た目にすることを目的とした加工と言えます。
市販されているワイシャツの多くは、ウォッシュ・アンド・ウェア加工も含めて、「形態安定加工」と総称して呼んでいることがほとんどのように思います。
オーダーシャツ専業ブランドの『スキルタ』においても、「形態安定加工」と記載しているものはすべてウォッシュ・アンド・ウエア加工も含んでいますね。
「形態安定加工」やウォッシュ・アンド・ウエア加工がどのように評価されるのかについては、先ほども話にでた日本産業規格(JIS)に、その試験方法が記されています。
(参考サイト:JISL1924:2017 形態安定加工ワイシャツ試験方法及び評価基準 | 日本産業規格の簡易閲覧)
こちらの内容を要約すると、洗濯10回もしくは20回後の生地や製品について、外観を標準見本※と見比べたり、寸法変化率※を算出することで、その形態安定性を評価するということです。
(標準見本※=製品が理想とする品質基準を示した生地や製品の見本のこと)
(寸法変化率※=生地や製品の伸び縮みの割合)
外観評価は最も悪いものを1級とし、0.5級ずつ等級が上がっていき、5級を最良のものとする9等級での評価となります。
また評価は3名で行われ、それぞれの評価した点数の平均値が、その生地や製品の形態安定性の結果となります。
例えば、外観評価者3名がそれぞれ『3.0級』、『3.0級』、『3.5級』と評価をした場合は、平均値である3.16から四捨五入されて、形態安定性は3.2級となります。
スキルタで扱っている「形態安定加工」は、10回洗濯後の生地外観平滑性※の項目で3.2級以上の評価がでているものになります。
(生地外観平滑性※=洗濯後に生地や製品についたシワなどの度合いを評価する)
日本産業規格(JIS)に定められている一般的な形態安定加工の評価基準は、『3.2級以上』ですので、公に認められた「形態安定加工」というわけです。

¥8,910~
生地特徴:綿ポリエステル混 / 形態安定 / 抗菌防臭
素材:綿55%ポリエステル45%

¥10,890~
生地特徴:綿ポリエステル混 / 形態安定 / 吸水速乾性 / 接触冷感
素材:綿65% ポリエステル35%
▶ ≪綿ポリエステル混 / 形態安定の生地一覧≫はこちら (SKYRTAへリンクします)
▶ ≪綿素材 / 形態安定の生地一覧≫はこちら (SKYRTAへリンクします)
▶ ≪COOLMAX® / 形態安定の生地一覧≫はこちら (SKYRTAへリンクします)
さらに、スキルタでは形態安定加工の上位に超形態安定加工というものを設定しています。
この加工は先ほどの生地外観平滑性の項目で3.5級以上の評価が出ているものを表していますので、よりシワが出ないワイシャツを仕立てることができます。

¥10,890~
生地特徴:綿素材 / 超形態安定
素材:綿100%
糸番手:40/1×30/1

¥10,890~
生地特徴:綿素材 / 超形態安定
素材:綿100%
糸番手:40/1×40/1
▶ ≪超形態安定加工の生地一覧≫はこちら (SKYRTAへリンクします)
ここで注意いただきたいのは、5級がシワの全く無い状態という点から考えると、3.2級や3.5級は決してシワが出ない生地ではないということです。
また、ノーアイロンまたはノンアイロンという表現については、日本産業規格(JIS)に定められた規定はないため、各メーカー独自の基準を設けて定義しているのが現状です。

¥10,890~
生地特徴:ポリエステル素材 / 形態安定 / ノーアイロン / 抗菌防臭 / 制菌 / 吸水速乾性
素材:ポリエステル100%

¥10,890~
生地特徴:綿ポリエステル混 / 形態安定 / ノーアイロン / 接触冷感 / 通気性
素材:綿50% ポリエステル50%
▶ ≪Hybrid Sensor®の生地一覧≫はこちら (SKYRTAへリンクします)
▶ ≪トリコットニットの生地一覧≫はこちら (SKYRTAへリンクします)
▶ ≪SPANO®の生地一覧≫はこちら (SKYRTAへリンクします)
「形態安定加工」をかけることの欠点を、敢えて一つだけ挙げるとすると、それは、生地の風合いが自然ではなくなるということです。
「形態安定加工」やウォッシュ・アンド・ウエア加工は簡単に言うと、樹脂によって繊維を固定することによって成されているため、加工をしていない生地と比べると、どうしても生地の質感が硬くなってしまいます。
普段、お仕事でワイシャツを着ない人が感じる『ワイシャツのごわっとした感じ』は、これによるものが多いと思われます。
『着心地』か『便利さ』か、求めるものは人それぞれですが、そのことを踏まえた上で選ぶ必要がありますね。

2. 「形態安定加工」の歴史
世界初のイージーケアシャツは、アメリカの老舗アパレルブランド『ブルックスブラザーズ社(Brooks Brothers)』によって生み出されたと言われています。
1953年、同社は、繊維メーカー『デュポン社(DuPont)』のポリエステル繊維『ダクロン (Dacron®)』を用いて、綿ポリ混紡のオックスフォード生地『ブルックスウィーブ (Brooksweave®)』を発表。
翌年には同様の混紡素材のブロード生地『ブルックスクロス (Brookscloth®)』も展開し、当時の衣料品業界に革新をもたらしました。
これらの生地は、アイロン掛けの手間を省き、速乾性にも優れていたことから、冷凍加工食品やテフロン加工のフライパンなど、便利な発明が家庭に普及し始めていたこの時代において、人々の生活をより便利なものにしていきました。
70年代に入ると、環境や健康への関心が高まり、「形態安定加工」における有害物質の使用規制が強化され、より安全で環境に配慮した加工技術の開発が進み、現在に至ります。
技術の進歩は目覚ましく、90年代には、綿100%でありながら「形態安定加工」が施されたイージーケアシャツが登場。各メーカーは消費者のさらなるニーズに応えるため、新たな素材や加工技術の開発に日夜取り組んでいます。
3. 「形態安定加工」の扱い方
「形態安定加工」が施されたシャツは、家庭での洗濯がおすすめです。
また、その効果を持続させ、長く綺麗な状態で着続けるためには、正しい洗濯方法が大切です。
こちらでまとめたポイントを参考にお取り扱いいただくことで、「形態安定加工」の機能性を最大限に活かして着用できるようになりますよ。
「形態安定加工」のシャツは家庭洗濯で

クリーニング店の仕上げ方法は、大きく分けて以下の2通りがあります。
一つは、高温のプレス機で乾燥させる『機械仕上げ』です。
この方法は、大量に仕上げることができるため、とても安価で経済的です。
しかし、濡れた状態のシャツに高温のプレス機を当てるため、適切にセットされていない場合、望まないシワが定着したり、「形態安定加工」の効果が低下する可能性があります。
特に、トップヒューズ芯を使用しているシャツは、芯地のポリエチレン樹脂が熱に反応して、縮みや変形を起こす恐れもあるので注意が必要です。
もう一つは、人の手で一枚一枚アイロンがけを行う『手仕上げ』です。
こちらは、生地や製品の特性に合わせたクリーニングを行うため、より高品質な仕上がりとなります。
熟練のスタッフが丁寧に対応するので、縮みや変形を起こす心配は少ないですが、手間と時間がかかるため、料金は高くなる傾向にあります。
「形態安定加工」のシャツは、クリーニングに出す費用を抑え、家庭で気軽に洗濯できることを目的として開発されました。
落ちにくい汚れなど、専門的なクリーニングが必要な場合でなければ、家庭洗濯で問題なく仕上げることが可能です。
『ワイシャツはクリーニングで』という習慣は根強いですが、お気に入りのシャツを長く着用できるよう、次の章では家庭での具体的な洗濯方法をご案内いたします。
「形態安定加工」の洗濯方法

「形態安定加工」のシャツの扱い方を、端的に言い表しているのが『ドリップドライシャツ (Drip-Dry Shirt)』という海外の呼び名です。
これは【濡れたまま吊るして乾かす】という意味で、国内でも2016年に洗濯表示記号が国際規格(ISO)に合わせて改定された際に、『ぬれ吊り干し』という方法で追加されました。
日本では湿度の高い気候や、洗濯機の設定も脱水ありきであることが一般的なためか、『ぬれ吊り干し』の表示はあまり見かける機会がないかもしれません。
しかし、「形態安定加工」の効果を引き出すには、この『ぬれ吊り干し』が最も適していると言えます。
シワがつく最大の原因である脱水を省略し、水分を含んだ状態で干すことで、水の重みでシワを自然に伸ばすことができるようになるためです。
また、洗い上がりの際には、衿やカフス、袖や身頃など、生地を軽く引き伸ばしてから干すようにすると、型崩れせずに乾いてくれるのでオススメです。
ただし、ニット素材の「形態安定加工」や『ノーアイロン(ノンアイロン)』の場合、水の重みで生地が伸びてしまう恐れがあるため、15~30秒程度の脱水を行いましょう。
布帛素材とニット素材の扱いの違いに注意して、それぞれに合った洗濯方法を選ぶことが必要です。
また、洗濯ネットの使用も大切です。
洗濯ネットに入れることで、他の衣類と絡まり合うことが防げるようになり、シワや型崩れを抑えることができます。
加えて、シャツの大きさに合わせた洗濯ネットを選ぶことで、よりシワになりづらくなります。
最後に、どうしても気になるシワがある場合は、アイロンを使用しましょう。
高温だと熱で生地を傷める恐れがあるため、中温(160℃以下)の設定で当て布を使って仕上げてください。
関連記事:読んでマスター!熟練の職人がレクチャーするシャツのアイロンのかけ方
4. さいごに
「形態安定加工」はその扱い方で、発揮する効果に差がはっきりと表れます。
このガイドを参考に、その機能を最大限に活かしていただければ幸いです。
スキルタでは、「形態安定加工」の生地を多数取り揃えています。
日常のケアが楽になることはもちろんのこと、あなたの身体や好みに合った一枚をお仕立てすることができます。
是非、スキルタの「形態安定加工」のオーダーシャツを試してみてください!
▶ ≪形態安定の生地一覧≫はこちら (SKYRTAへリンクします)



